平成29年2月の小笠原諸島における公証相談
平成29年2月10日(金)から2月15日(水)までの日程で、NPO司法過疎サポートネットワークに所属する弁護士6名、司法書士3名、税理士2名とともに、公証人2名が「第31回小笠原村法律・税金・法律教室」に参加しました。当初の予定では、参加者が父島班と母島班に分かれて、それぞれ11日12日の2日間にわたって相談会を実施する予定でしたが、父島には、船は揺れながらも片道24時間の航海を経て、予定通り到着したものの、父島から母島への船が、海上天候不良のため欠航となってしまい、母島班は、父島班の活動に一緒に参加することとなりました。
父島では、父島福祉センターにおいて、合計13件の相談があり、その一環として、公証人において、事前に弁護士を通じて依頼を受けていた遺言公正証書1通を作成したほか、相談内容で、公証業務に関係のある内容について、助言するなどしました。
2月13日に父島から母島への船が1往復出ることになり、公証人1名を含む母島班の有志数名は、日帰りで村役場母島分室において相談会を開催しました。母島での相談件数は、2件と少なかったですが、当初の予定を変更して平日に設定した3時間ほどの開催だったことからすると、やむを得ないと思われます。母島では、公正証書の作成はありませんでしたが、公証人において、相談者にパンフレットを配布し、公正証書遺言について説明をしました。
小笠原諸島は、戦後本土に復帰し、「小笠原諸島の復帰に伴う法令の適用の暫定措置等に関する法律」などが制定され、特殊な賃借権等が設定されており、土地の権利関係が複雑になっています。また、住民には、外国籍関係者も多く、相続関係も複雑になっています。このような事情を背景に、小笠原諸島では、遺言を作成しておく必要性が特に高いと思われます。今回、遺言公正証書を作成した嘱託人も、知人から遺言が作成されていたので相続手続がとても楽に進んだと聞いたことから、自分も作成しようと思ったとのことでした。また、小笠原では、離婚した後は島を離れる人も多いらしく、離婚給付等について公正証書を作成しておく必要もあろうかと思われます。
多くの島の住民の方々には、公正証書について知ってもらうために、村役場等を通じて、公正証書に関するパンフレットを配布するなど公証業務の広報活動を充実させる必要が感じられました。
杉並公証役場公証人 飯倉 立也
神田公証役場公証人 稲葉 一生