
東京公証人会は、平成13年11月から、公証人がNPO法人司法過疎サポートネットワーク
「小笠原くらしの法律税金相談・法律教室」に参加するようになり、
平成16年度からは、会として組織的に公証人を小笠原諸島に派遣するようになり、
現在に至るまで、毎年、継続して、小笠原諸島において公証相談を実施しています。
令和4年9月の小笠原諸島における相談
令和4年9月21日から26日までの日程で、第42回小笠原くらしの法律税金相談・法律教室が実施され、父島の地域福祉センターにおいて相談会を実施する父島班(弁護士2名、司法書士1名、税理士4名、公証人1名、ゲスト3名)と、小笠原村役場母島支所において相談会を実施する母島班(弁護士1名、税理士2名、公証人1名)の2班体制で行われました。
今回は、新型コロナウイルス感染症の状況から、相談会のみにとどまり、法律教室が実施されなかったことは残念でした。
父島では、養育費支払公正証書を1件作成した他、遺言公正証書作成等に関する相談1件、後見・事業承継に関する相談1件に直接携わりました。
なお、同遺言公正証書については、令和5年2月に実施予定の第43回小笠原くらしの法律税金相談・法律教室の際に作成することとなり、帰京後、同相談・法律教室に参加予定の公証人に対し、引継ぎを行いました。
養育費支払公正証書を作成した1件を含め、相談件数は合計16件ありました。
母島では、母島到着日の9月22日午後6時から午後8時までと、翌23日午前9時から午後1時までの合計6時間でしたが、この間、合計5件の相談があり、公正証書の作成に関連する相談も2件ありました。
小笠原への移動手段は片道約24時間を要する約6日に1便の船便のみであり、島で暮らす人々にとって、裁判や調停等の司法サービスにアクセスすることが容易ではない上、法律問題等につき専門職に相談し、助言を受ける機会も限られており、法律・税務の様々な立場の専門家が集まって相談を受け、必要に応じて公正証書の作成その他のサービスの提供を行う相談会開催の意義は極めて大きく、長年にわたり、相談会に参加している専門家に対する島民の皆様の信頼の厚さも感じられました。東京公証人会としても、引き続き、相談会に参加していくことが重要と感じました。
空き時間には、南島訪問など、世界自然遺産に指定された小笠原の美しい自然に触れる機会もあり、固有種に恵まれた独自の生態系とこれを守るための人々の活動を知ることができるなど、有意義な時間を過ごすことができました。
上野公証役場公証人 加藤 朋寛
神田公証役場公証人 田中 寿生
令和4年2月の小笠原諸島における公証相談
令和4年2月11日(金)~16日(水)の5泊6日で、伊藤靖子(杉並公証役場)・互敦史(八王子公証役場)の2名で、NPO法人・司法過疎サポートネットワークが主催する、小笠原諸島における法律相談会に参加しました。
メンバーは総勢10名で、父島班(伊藤公証人、弁護士1名、司法書士1名、税理士2名)と、母島班(互公証人、弁護士1名、司法書士1名、税理士2名)に分かれて担当しました。
前回、前々回と同様、今回もコロナ禍の中での実施であり、参加者全員が事前にPCR検査を受けましたが、幸い全員が陰性ということで、無事開催することができました。
2月11日午前11時に竹芝桟橋を出港した「おがさわら丸」は、24時間後の2月12日午前11時に父島に到着し、母島班は、更に「くろしお丸」に乗り換えて同日正午から2時間の船旅を経て、同日午後2時に母島に到着しました。
父島班・母島班とも、到着日の2月12日と翌13日の二日間、相談会を開催しました。
父島班では、全体としては、初日12日から最終日15日までの間に、継続相談や過去の相談者の新件など、会場外で対応したものを含めて14人15件の相談があり、公証役場関連では、会場を設置しての相談会が催された12日、13日にそれぞれ1件つづ公正証書作成手続きに関する一般的な説明を行い、それ以後では、いずれもNPO法人・司法過疎サポートネットワークのメンバーの方からの依頼により、14日には会場外にて公正証書の効力についての一般的な説明を1件行い、15日には、地元の金融機関に出向いて保証意思宣明公正証書作成に関する説明を行いました。いずれも公正証書の作成に直結する相談ではありませんでしたが、これらの件を通じて、小笠原特有の諸事情の一端に触れることが出来、非常に参考になりました。
母島班では、公証役場関連では、初日の12日に遺言書の作成が1件ありましたが、翌13日は、1件の相談もありませんでした。公証役場関連以外の相談は、2日間で2件ありました。コロナ禍中での開催ということもあって低調でした。
なお、両班とも、今回は法律相談のみであり、法律教室等は開催できませんでした。これもコロナ禍の影響によるものであり、一日も早い収束を願うばかりです。
今回の法律相談会は、以上のとおりでしたが、長年にわたって多数回参加している他業種の方々にお聞きしたところ、通常開催の場合、多くの島民の方々が相談に訪れるとのことであり、このような取組みの必要性は高いと感じました。
杉並公証役場公証人 伊藤靖子
八王子公証役場公証人 互 敦史



令和3年9月の小笠原諸島における公証相談
小笠原くらしの法律税金相談・遺言相談(第40回)は、令和3年9月21日(火)から26日(日)(船中2泊、現地3泊)の日程で行われました。参加者は合計8名(弁護士2名、司法書士3名、税理士2名、公証人1名)で、父島班(4名)と母島班(4名)とに分かれ、当職は、遺言作成の予定があったため母島班となりました。
新型コロナの新規感染者数は減少傾向にあったものの、緊急事態宣言下での訪問ということもあり、船会社から事前にPCR検査キットの送付を受け、出発前日に竹芝客船ターミナルで検体を提出して陰性であることの確認を受けることが求められました。
母島では、到着日である9月22日の午後6時から午後8時と、翌23日の午後9時から午後1時に小笠原村役場母島支所で相談会を開催し、相談件数は13件でした(父島は8件)。
当職は、公正証書遺言を2件作成しました。このうち1件については出発前に相談を受けて準備を済ませていましたが、1件は到着日の相談の際に依頼を受けて翌日に作成することが決まりました。このような場合に備えて、職印、書式の入ったUSBメモリ及び罫紙を持参していたことから、同行していた司法書士のパソコンと村役場のプリンタ(役場の方には休日出勤をお願いしました。)を借りて完成させました。
今回は、上記2件以外に相続関係の相談が全体で3件ありました。小笠原では住民の高齢化が進んでおり、公証相談の需要は益々増加することが予想されます。
期間中は快晴に恵まれ、真夏の太陽のもと、ボニンブルーの海に囲まれた美しい自然の中で、貴重な体験をすることができました。
地元の関係者の皆様や同行した先生方には大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。
神田公証役場公証人 阿部 正幸



令和2年2月の小笠原諸島における公証相談
令和2年2月12日(水)~17日(月)の5泊6日で、田村眞(浜松町公証役場)・原啓一郎(丸の内公証役場)の2名で、NPО法人・司法過疎サポートネットワーク主催の、小笠原諸島での法律相談会に参加してきました。
メンバーは総勢10名で、父島班(原公証人、弁護士1名、税理士2名、司法書士2名)と母島班(田村公証人、弁護士・税理士・司法書士各1名)に分かれての担当です。
今回は、コロナ肺炎の影響が若干心配されましたが、幸い無事開催の運びとなりました。父島までは竹芝桟橋から24時間の船旅で、母島へは父島からさらに船で2時間かかります。乗船の際には、体温を計測し、問診票に記入して提出し、また、マスクの支給がありました。
父島班・母島班とも到着日の13日と翌14日に相談会を開催しました。父島では、初日に公証役場関係の相談が3名あり、いずれも遺言の相談でした。そのうち1名は、相談会の前から、メンバーの司法書士を通じて遺言作成を相談していた方で、初日にはその最後の打ち合わせを行い、二日目に、遺言を完成させました。このほか、二日目の相談では母島から戻ったメンバーも最後に合流し、離婚給付契約に関する公正証書作成の相談を受けましたが、当事者間の合意が十分にできておらず、残念ながら作成には至りませんでした。
母島では、今回、公証役場関係の相談は1名もなかったのですが、他の一般的な法律問題や、税務関係の相談が複数名ありました。父島も、初日・二日目とも公証役場以外の分野の相談が何名か来られました。
なお、今回の行事は法律相談のみで、法律教室等は特に開催しませんでした。
このように、少ないながらも島民の方々の法律相談のニーズは確実にあり、公証人として、微力ながらもお役に立てているかな、と思います。他業種の専門職と協力しての司法過疎問題への取り組みの重要性を改めて認識した、意義深い相談会でした。
浜松町公証役場公証人 田村 眞
丸の内公証役場公証人 原 啓一郎


令和元年9月の小笠原諸島における公証相談
1 24時間もかかる船でしか行けない東京都内(車のナンバーは驚きの品川、もちろん軽4)の世界遺産、それが小笠原です。人の住んでいるのは、小笠原の父島と母島だけで、しかも貴重な独自の生態系を護るために、動植物は持込み禁止です。犬猫のペットが見当たらない、ずいぶん遠い島に思います。裁判所もなく、弁護士、司法書士、税理士の方も公証人も住んでいません。しかし、当然のことながら、住んでいる人には税金、相続、損害賠償等色々な困りごとが起こります。その問題をどのように解決すればいいのか、そもそもどこに相談すればいいのかということになります。住民の方が困りごとを身近に相談できるように、年2回開かれている「小笠原くらしの法律税金相談会」に、私たち2人の公証人(神田公証役場小島浩、昭和通り公証役場山口雅髙)も、NPO司法過疎サポートネットワークの弁護士5名、司法書士2名、税理士5名の方々とともに参加してきました。この相談会は、歴史があり、何と36回を数えます。今回参加されている方も、36回すべて参加されている方から私たちのような初めての方まで経験・老若男女多様な方々でした。
2 日程は、令和元年9月19日(木)から9月24日(火)までで、台風が怖いシーズンでしたが、9月19日午前11時に竹芝桟橋を出発し、翌20日午前11時に小笠原父島に到着しました。心がけが良かったせいか、比較的穏やかな海上で、カツオドリが舞い、沈む夕陽と昇る朝日の大海原を見ることができました。
3 相談会の様子をお伝えします。父島に到着後、母島班と父島班の二班に分かれました。母島は父島からさらに2時間の船旅ですが、父島までの24時間の船旅のせいか、短く感じました。
父島班(山口担当)は、9月20日午後から、まず地域の方々に理解を深めてもらうため、小笠原村地域福祉センターにおいて、遺言に関する寸劇を行いました。この寸劇は、弁護士、司法書士及び税理士がサザエさんの家族に扮し、波平、カツオ、マスオなど、各自の役どころの立場から相続に関する理解を述べ合うもので、寸劇の後、専門的な観点からの説明を行いました。父島班では、同日夕刻から法律税務相談会を実施しましたが、そこで御夫婦の遺言公正証書を作成しました。翌9月21日も、父島班では午前から地域福祉センターで法律税務相談会を実施しましたが、ここでも遺言公正証書を作成しました。それは、遺言公正証書を作成した御主人の死後、奥様が新たな遺言公正証書を作成したというものでした。
4 母島班(小島担当)は、9月21日(金)夜7時から9時までと翌22日(土)の2日間にかけて、相談を受けました。中には、直ぐには解決しにくい名誉等をめぐる諍いや税金の問題等もあり、幅広く、視野の広い豊かな法的知識と人間観察、洞察力が必要と思われる難しい案件もありました。といっても、公証人の私が活躍する場面は残念ながらありませんでした。見習いにきた大ベテランの困りごと相談員という風情のまま終わりました。反省会は非常に充実しており、深夜未明まで、聴く人によっては「我が人生を語る」と色分けされるかもしれない真摯な議論が交わされ、島の暮らし振りとは異なる都会的喧噪を醸し出したかもしれません。なお、反省会は船中でも続々編があり、大いに学ぶことができました。満天の★★、天の川に護られ、海からの贈り物をもらって生きていることを実感しながら、父島に戻り、翌日遺言公正証書を作成して、少しだけ役に立つことができました。その折、父島在住の四元土地家屋調査士の事務所の機器をお借りし、現地の方々の協力あってこその相談会だと改めて感じました。この場をお借りして、四元先生、役場の方々始め関係者の皆様、そしてNPO司法過疎サポートネットワークの先生方々に公私にわたり歓迎していただきました。心を込めてありがとうございます。
5 離島に暮らす村民の方々が、今回のような公証人による相続や遺言等公証相談に期待を寄せていることを実感することのできた相談会でした。離島に対する公証業務の広報活動を充実させる必要性を強く感じる機会となりました。
神田公証役場 小島 浩
昭和通り公証役場 山口雅髙


